ユーザビリティテストとは何か?評価項目やポイントを抑えた取り組みが重要に
製品・サービスを提供する上で、ユーザーにとっての使いやすさであるユーザビリティを高めることは、ビジネスの成功につながる重要な要素となります。製品・サービスのユーザビリティを評価するためには、ユーザビリティテストにより実際に製品・サービスを利用してもらう方法が有効です。
この記事では、ユーザビリティの定義や重要性に加えて、ユーザビリティテストの実施方法や評価項目、実施する上でのポイントについてご紹介します。
ユーザビリティとは?
ユーザビリティテストの説明に入る前に、まずユーザビリティとは何かについて、簡単に整理します。
ユーザビリティの定義
ユーザビリティとは、製品やサービスなどの使いやすさを示す言葉です。たとえば、国際的な標準化団体であるISOによれば、ユーザビリティは以下のように定義されています。
ユーザビリティ(usability)
ISO 9241-11:2018 人とシステムのインタラクションの人間工学-第11部:ユーザビリティ:定義及び概念 より
特定のユーザーが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用する際に,効果,効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い。
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=ISO+9241-11%3A2018
上記の定義では、ユーザビリティは目標の達成度合いを「効果や効率、満足」によって図るものとされています。それでは、ユーザーは製品・サービスを利用する際に、どのような観点でこれらを評価しているのでしょうか。
一般的にユーザーは、自身の目的を達成するために製品・サービスを利用します。たとえば、検索エンジンであれば知りたい情報を調べる際に利用されますし、掃除機であれば部屋をきれいにすることが目的です。この際に、自分が期待する結果が「手間なく」「確実に」かつ「素早く」実現されるかどうかがユーザーの満足度に関わります。検索エンジンであれば、入力したキーワードの意図に沿って、自身が必要としている情報がすぐに表示されることでユーザーは満足します。
ここでは簡単な例を取り上げましたが、実際にはユーザビリティの評価は多元的です。そもそも製品・サービスを使い始めるにあたってのハードルの高さ、使い方は分かりやすいか、誤操作は起きにくいかなど、様々な観点において、効率的に、気持ちよく、また簡単にその目的を達成できるかどうかを評価することが重要です。
なぜユーザビリティが重要なのか
モノが飽和する中で、製品・サービスが提供できる機能は頭打ちの状況にあり、もはや新機能を提供するだけでは製品・サービスの差別化につながらないという現状があります。
このような中、製品・サービスの利用において、ユーザーが気持ちの良い体験ができるかどうかが差別化要素の一つとして重要視されています。この「気持ちの良い体験」を提供するために、ユーザビリティの向上という観点が重要となるのです。
ユーザビリティテストとは?
それでは、ユーザビリティのテストとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
問題抽出や改善確認に有効となるユーザビリティテスト
ユーザビリティテストとは、ユーザビリティにおける問題の抽出や改善状況の確認を、ユーザー視点で行うテスト手法の一つです。ユーザビリティテストでは、本物の製品・サービスもしくはプロトタイプなどを利用することで、その操作性に関する問題を発見することを目指します。ユーザビリティテストは、社内の開発メンバーや品質保証部門などが実施することも多いですが、実際に製品・サービスを利用するユーザー層にテストを実施してもらうことで、よりユーザー視点に近いテストフィードバックを期待することもできます。
ユーザビリティテストの一般的な流れは以下のとおりです。
①テスターに実施してほしいタスクを提示する。
②そのタスクに沿って製品・サービスを操作してもらう。
③その際の実行過程を観察する。
④ヒアリングやアンケートなどでフィードバックを収集する。
⑤これらの結果から、ユーザビリティに関する問題の抽出や、その問題の原因に関する分析を行う。
ユーザーテストとユーザビリティテストの違い
ユーザビリティテストとよく似た言葉に「ユーザーテスト」と呼ばれるものがあります。両者は似ている言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
ユーザーにとっての使いやすさを測定するユーザビリティテストに対し、ユーザーテストは「製品・サービスがユーザーに受け入れられるか」を図るものです。その内容は操作性に限らず、ユーザーがその製品・サービスを価値のあるものととらえるかどうか、またユーザーにどのような体験が与えられるかなど、全般的な評価を行うこととなります。
ユーザビリティテストとユーザーテストは目的が異なるものであり、テストの観点や実施内容にも違いがあります。ユーザーテストについては以下の記事で詳しく解説しているため、よろしければ併せてご覧ください。
ユーザビリティテストにおける主な評価項目
以下では、ユーザビリティテストにおける主な評価項目についてご紹介します。ユーザビリティテストにおける評価観点は、大きく「定性的」なものと「定量的」なものとに分かれます。
定性的評価
ユーザビリティは利用者の感覚面に依るところが大きいため、定性的評価の実行は非常に重要です。具体的には、操作性がひとつの評価ポイントとなります。
操作性
ユーザーが実際に製品・サービスの操作を行っている際に、その操作内容を観察することで、ユーザーがどの様な箇所で操作に困るのかを把握できます。たとえば、ユーザーがパスワードの設定を行う際に、操作に戸惑いが見られたとします。テスターによるタスク実施中にこのような状況を把握したら、操作終了後にヒアリングを行うことでその原因を明らかにします。ヒアリングを行うことで、たとえば「パスワードの設定条件が分かりにくかった」といったテスターの意見が明らかとなるでしょう。
複雑な操作はユーザーにとってストレスとなります。ユーザーにとって気持ちの良い体験ができるように、ユーザビリティテストを通して製品・サービスにおける複雑な操作個所を特定し、改善を図っていくことが重要です。
なお定性的評価においては、数名のテスターのみによる評価だとバイアスがかかったテスト結果となってしまうリスクがあるため、必ず一定数のテスターを確保した上で実行することが重要になります。
定量的評価
感覚的な側面の大きいユーザビリティの調査においても、定量的な評価を行うことも可能です。ユーザビリティテストにおける定量的評価の具体例としては以下のとおりです。
タスク成功率・エラー率
与えられたタスクに成功した確率、もしくはエラーが起きた確率などは、定量的評価における一つの指標となります。たとえば、入力フォームにおいて離脱やエラーが発生せずにユーザーが登録を完了できる確率を測定することで、入力フォームの分かりやすさや操作性の良さを定量的に評価できるでしょう。
このような定量的なアプローチのメリットとして、他サイトとの比較といったベンチマーク調査が行えるという点があります。また、同じ画面においてデザインAとデザインBを作成したうえで、両者を定量的に比較することで、どちらが優れたデザインかを判断する指標にもなります。
満足度
タスクを実施したユーザーに対して、アンケート調査などで満足度を数値評価してもらうことによりデータを収集し、平均値や中央値などの統計指標で結果を分析できます。
満足度のように特定の個人の意見により結果が大きく左右されやすいような評価項目を利用する場合は、定性的評価と同じく、結果の偏りを避けるために、統計的に有意性が示せる程度まで一定数のテスターを集めることが重要です。
ユーザビリティテストを実施する上でのポイント
最後に、ユーザビリティテストを実施する上で気を付けるべきポイントを紹介します。
目的に合わせたテスト設計
ユーザビリティテストに限った話ではありませんが、テストを実施する際は目的に合わせたテスト設計が重要です。
ユーザビリティテストを実施する際には、テスターに実施してもらうタスクの設定や評価項目の定義、評価の収集方法などを考慮する必要があります。特に、目的の定義はユーザビリティテストの方針をブレさせないためにも重要です。
ユーザビリティテストの究極的な目的は、ビジネスを成功させることです。そのうえで、ビジネスの成功のために、ブレイクダウンした具体的な目的を決めます。たとえば、サイト申込フォームの離脱率削減や、ユーザー満足度の向上などが一つの例となるでしょう。このように目的を定義したうえで、その目的に向けてユーザビリティテストを実施するという考え方が重要です。
テストを効果的に進められる技術の活用
ユーザビリティテストにおいては様々なテクノロジーを活用することもできます。
たとえば、アイトラッキングはその一つです。アイトラッキングとは、その名前のとおりテスターの目線を測定する手法のことです。テスターの方にアイカメラをつけてもらい、目の動きを観察します。これにより、操作画面に対してどのように目線が動くかを測定できます。
また、脳科学の発展に伴い、近年では脳波を利用する方法も検討されています。ニューロマーケティング(脳科学に基づき消費者の心理や行動原理を分析するマーケティング手法)が知られていますが、同様にユーザーの脳波を測定することで、操作を行った際にどのような感情を抱くかを測定します。
このような技術を利用することで、より高度なテストを実現することができるでしょう。
ペルソナに合わせたテスターの確保
ユーザビリティテストを実施する上では、製品・サービスのターゲットユーザー層と一致したテスターを確保する必要があります。いわゆるペルソナが一致したテスターがテストを実施することで、より実践的な評価および評価結果の収集が可能になります。
一方で、自社のターゲットユーザー層と一致したペルソナを持つテスターの確保は簡単ではなく、実際は社内メンバーでテストを実施しているケースも多く見られます。実際のユーザーが抱く印象により近い形での評価を実現するためには、テスターを潤沢に確保している企業への委託など、社外リソースの活用も検討するべきでしょう。
ユーザビリティテストにも活用できる第三者検証サービス「Applause」とは?
このように、ユーザビリティテストの実施において課題となりやすい、「ペルソナに合わせたテスターの確保」において検討したいのが、外部リソースの活用です。
当社では、世界200以上の国・地域で100万名以上のテスターを抱える、世界最大級のクラウドテストソリューション「Applause」を提供しています。ユーザビリティテストを実施する際に課題となりがちなターゲット層に合わせたテスターの確保においても、多数のテスターの中から対象とする製品・サービスに合わせたペルソナを持つテスターをアサインすることができます。豊富な実績から専門的な知見に基づき、テスト計画から実施、分析結果の報告までのサポートも可能です。
まず初めに1~2か月という期間で短期パイロットを実施することもできますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
まとめ
この記事では、ユーザビリティテストの実施方法や評価項目、ポイントなどを整理してご紹介しました。現代のビジネスにおいては、BtoB・BtoCに限らず、ユーザー体験が重視されるようになっています。ユーザビリティは製品・サービスの差別化要素の一つです。ユーザビリティを高めていくためには、ユーザビリティテストは不可欠の取り組みといえるでしょう。