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Webアクセシビリティとは? 4つの原則や達成基準、メリット、事例など解説

スマホやタブレットが普及した現代、世界中のさまざまなデバイスが常にインターネットでつながり、Webコンテンツの閲覧者は特定の人々に限られません。そのため、年齢や身体的条件に関わらず、あらゆる人々がWebコンテンツの情報にアクセス(=情報入手)しやすいか」という観点は、現代では当たり前に求められつつあります。本記事では、Webアクセシビリティが求められる背景や、その実現に向けたガイドライン、実際の事例などを紹介します。

目次

Webアクセシビリティとは

Webアクセシビリティは、あらゆる人々をWebコンテンツの情報にアクセス可能にする、という世界共通の考え方です。日本でも2021年5月の「障害者差別解消法」の改正に伴い、Webアクセシビリティの確保は、民間事業者の努力義務から義務化へとなりました。

以下では、Webアクセシビリティの言葉の定義や、ユーザービリティとの違いについて説明します。

①Webアクセシビリティ(a11y)とは

Web技術の標準化を推進するW3Cでは、「Webアクセシビリティとは、障害のある人がWebを使えるようにすることを指す」と定義しています。近年は、言葉の定義を拡張して、特定の人々に限らずあらゆる人がアクセシビリティの対象である、という考え方が一般的です。

ちなみに、Accessibility は、 A から Y までの間に 11 文字が挟まれているため、a11y(エー イレブン ワイ)と省略して呼ばれることもあります。

②ユーザービリティとの違い

ユーザービリティは、Webページの「使いやすさ」「わかりやすさ」、あるいはユーザーの満足度を意味します。

一方で、アクセシビリティは、Webページにおいてユーザーが求める情報へ「たどり着けるかどうか」を意味します。

たとえば、日本語でのみ提供されているWebページを、英語しか読めないユーザーが見た場合、そのサイトの見た目の良し悪しに関わらず、ユーザーは必要な情報にたどり着くことができません。

このWebページ内の文字や画像の配置等をわかりやすくすることがユーザービリティの改善、英語のWebコンテンツを提供するのがアクセシビリティの改善と考えられます。

③アクセシビリティの4つの原則

W3Cが公開するWCAG(Web Content Accessibility Guidelines : ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)は、大きく4つの原則から構成されます。

(1)知覚可能(Perceivable)

知覚可能(Perceivable)とは、利用者が自分の視覚や聴覚等複数の感覚を用いて、Webページを認識できるようにすることを意味します。

たとえば、聴覚に障害を持つユーザーは、Webページ内の音声や動画を聞くことができません。そこで、Webページの情報を聴覚以外でも認識できるように、音声の書き起こしをWebページ内に記載する手段が考えられます。

(2)操作可能(Operable)

ユーザーが、Webページ内にあるボタンやリンクを、マウスやキーボードを用いて操作できるようにすることです。

たとえば、サービスへの登録が必要なページでは、ユーザーが登録に必要な情報(メールアドレスや名前、パスワード)をキーボードを利用して入力できるようにしておきます。ガイドラインの中では、「操作可能」の要素として、発作を引き起こす可能性のあるアニメーションの回避や、ページ内容がわかるタイトルの記載などについても言及されています。

(3)理解可能(Understandable)

Webページは利用者にとって内容が把握できる状態でなければなりません。

たとえば、日本語ユーザーには日本語表記、英語ユーザーには英語表記のように、読者が自分にあった言語でWebページを理解できるようにします。また、専門用語などがある場合、その読み方や意味について注釈をつけるなどの配慮が必要です。

(4)堅牢(Robust)

Webページの「堅牢」とは、利用している技術に関わらず、Webページが長く使い続けられる状態を維持することを意味します。

Webページの作成は様々な方法がありますが、現在利用している技術が将来も使い続けられるとは限りません。ガラパゴス携帯向けのサイトがスマホの普及で使われなくなったように、世の中の変化に合わせて標準的な技術も変化を続けていきます。

Webページを作成する際には、世の中で広く採用されている標準技術を用いることが推奨されます。標準技術であれば、新しいデバイスや技術が今利用しているWebページを正常に認識できる可能性が高まります。

④Webアクセシビリティのメリット

Webアクセシビリティを確保することには多くの意味があります。以下では、Webアクセシビリティによる3つのメリットを紹介します。

(1)利用者層の拡大

Webアクセシビリティが実現されることで、さまざまな人がWebページへアクセス可能になり、より多くのユーザーに利用されるWebサイトとなることが想定されます。なぜなら、年齢や身体的条件、デバイス、言語等の制約にとらわれないからです。

(2)コンテンツの品質向上

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines : ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)に沿ったコンテンツ開発は、コンテンツ自体の品質向上につながります。

ガイドラインでは、あらゆる人に対して配慮ある設計を行う上での注意点が一覧化されています。ガイドラインに従うことで、代替テキストの設定や、マウスではなくキーボードを用いたフォームの送信時の設定(タブキーで遷移する順番)など、一般的なコンテンツ作成では見落とされやすい要素に気が付くことができます。

(3)社会的な責任(CSR)

Webアクセシビリティを向上させることは、企業の社会的責任でもあります。2021年には、日本でも「障害者差別解消法」が改正され話題となりました。インターネットが広く普及した世の中において、アクセシビリティは、当たり前に考慮するべき論点なのです。

Webアクセシビリティの事例

Webアクセシビリティは、さまざまな観点から検討が行われています。以下では、Webコンテンツの要素に関する事例と、デジタル庁のWebアクセシビリティに関する取り組みを紹介します。

①Webコンテンツの要素に関する事例

W3Cでは、Webアクセシビリティの代表的な取り組み事例として、以下の3つの要素を紹介しています。

(1)画像の代替テキスト

Webページに挿入された画像に、HTMLのimgタグ内で代替テキスト(画像の内容を説明するためのテキスト)を指定します。代替テキストが指定されていないと、スクリーンリーダーでテキストを読み上げた際に、利用者が画像の内容を理解できません。代替テキストが設定されていれば、目の不自由な人や、通信量の制限を理由に画像表示をオフにする人でも内容を把握可能です。

(2)キーボードでの入力(マウス不要)

Webページにアクセスする人の中には、マウス操作ができない人もいます。アクセシブルなWebページでは、マウスが無くても、キーボードからすべての機能を利用できることが期待されます。また、キーボードも利用できないような人に対しては、音声入力などの技術利用が選択肢として挙げられます。

(3)音声の書き起こし

Webページで提供される音声や動画ファイルは、耳が聞こえない人には利用できません。テロップなど、音声の書き起こしテキストを提供することで、難聴者が自分の目でコンテンツにアクセスできます。

②デジタル庁の事例

2021年に発足したデジタル庁では、運営する公式サイトについて、Webアクセシビリティのガイドラインである「JIS X 8341-3:2016」に基づいた試験を行い、その結果を公表しています。

達成基準は前述したアクセシビリティの4つの原則を細分化したもので、適合レベルAとAAの38項目が対象です。試験結果によると、デジタル庁の公式サイトでは、38項目のうち34項目がガイドラインに適合(内8項目は該当コンテンツ無し)できています。

実際のWebページを確認すると、画像への代替テキストの設定や、英語でのコンテンツ提供、キーボードのみでのページ操作を確認できます。

ウェブアクセシビリティ検証結果│デジタル庁

デジタル庁
ウェブアクセシビリティ検証結果|デジタル庁 デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを一気呵成に作り上げ...

Webアクセシビリティのガイドラインと達成基準

Webアクセシビリティは、日本工業規格やW3Cからガイドラインが提供されています。これらのガイドラインは、Webアクセシビリティの達成度合いを評価する基準として、世の中で広く活用されています。

①JIS X 8341-3

JIS X 8341-3は、国内外の既存ガイドラインを参考に、2004年に日本工業規格によって制定されました。高齢者や障害のある人を含むすべての利用者が、使用している端末やブラウザなどに関係なく、Webページを利用できるようにすることがJIS X 8341-3の目的です。

日本語特有の事項も網羅した独自の指針であり、2004年の制定以降2回の改定が行われています。コンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として、レベルA、レベルAA、レベルAAAという3つのレベルの達成基準が定められています。2004年に制定されて以降、2回の改定がありました。

(1)JIS X 8341-3:2004

JIS X 8341-3:2004は2004年に制定された、日本語特有の事項も網羅した独自のガイドラインです。

HTML・XHTML・CSS・XMLを用いたコンテンツについて、高齢者・障害者がブラウザ上で操作、または利用できるように配慮することを基本方針としています。

(2)JIS X 8341-3:2010

JIS X 8341-3は2010年に改定されています。

改定の特徴は、後述するWCAG 2.0と技術的な記載を合わせた点にあります。これにより、JIS X 8341-3で独自に定義されていた基準と、世界基準とのダブルスタンダードが解消されました。また、試験の実施方法や結果の表示方法が定められ、判断基準が明確化されました。

その結果、ばらつきのあったアクセシビリティに関する品質評価を、統一的なものさしで評価できるようになりました。前述したレベルA、レベルAA、レベルAAAの3つの品質基準は、この改定から導入されています。

(3)JIS X 8341-3:2016

JIS X 8341-3は2016年に2回目の改定が行われました。

2012年にWCAG 2.0がISO/IECの国際規格となったことを受けて、JIS X 83141-3も「ISO/IEC 40500:2012」の一致規格となるようにこのタイミングで改定されました。

これにより、海外発のサービスの日本語提供や、日本発のツールの海外展開といったローカライズが容易になっています。また、一致規格としてWCAG2.0のガイドラインを日本で広く取り扱うにあたり、訳語の見直しも行われました。WCAG2.0は英語での原文が難解かつ、当時の邦訳に意訳や説明が冗長な箇所があったため、原文に忠実で日本語でもわかりやすい形に修正が行われました。

②WCAG

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines : ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)は、W3Cが定めるWebアクセシビリティのガイドラインです。障害者に配慮あるコンテンツ提供を目的に制定され、現在まで世界標準の規格として活用され続けています。

(1)WCAG 1.0

WCAG 1.0は1995年5月に勧告され、14のガイドラインと65項目のチェックポイントから構成されます。

チェックポイントには優先度が1(must)・2(should)・3(may)で割り振られており、それぞれレベルA、AA、AAAと記されます。HTMLとCSSによるアクセシビリティの課題解決が中心の内容です。2021年5月に廃止扱いとされています。

(2)WCAG 2.0

WCAG 2.0は2008年12月に勧告され、4つの原則と12のガイドラインで構成されています。

達成基準が61個設けられており、適合レベル(A・AA・AAA)の定義や、HTMLとCSSに限定されない幅広い技術適用を想定して内容が変更されています。2012年には、ISO規格として国際規格に認定されています。

(3)WCAG 2.1

WCAG 2.1は2018年12月に勧告され、WCAG 2.0に17個の達成基準が追加されています。

その内訳は、Aが30個(+5個)、AAが20個(+7個)、AAAが28個(+5個)です。モバイルデバイス、視覚障害を持つ利用者、認知または学習障害のある利用者、という3つの観点から改定が行われました。W3Cから勧告が出されており、2022年11月時点で最新の標準ガイドラインとなります。

(4)WCAG 3.0

WCAG 3.0は2021年1月からW3Cにより公開されているガイドラインです。

アクセシビリティに不慣れな人にもわかりやすく、柔軟に利用できることを目的にしています。近年登場したXR(拡張現実、仮想現実、複合現実)や音声入力といった技術に関するトピックも取り扱っています。

③達成基準

現在、国際規格に認定されているWCAG 2.0は、JIS X 8341-3でも同一の達成基準が採用されています。

達成基準は、適合レベルAが25個、AAが13個、AAAが23個となっています。一般的にはAAまでの合計38個の達成が目安です。基準に沿ってWebページの試験を行った場合の、結果の公開方法については以下の通りです。

  1. 表明日
  2. 規格の番号
  3. 満たしている適合レベル
  4. 対象となるページの簡潔な説明
  5. 利用している技術のリスト
  6. 試験対象のページの選択方法
  7. 試験を行ったページのURL
  8. 達成基準チェックリスト
  9. 試験実施期間

試験結果に基づき、上記の9項目についてWebページ上で公開を行うのが慣例となっています。前述したデジタル庁のWebページにも同様の形式で、試験結果が掲載されています。

まとめ

日本でも、行政の取り組みや法令改正を通じて、Webアクセシビリティの重要性が徐々に高まっています。今後、Webアクセシビリティの確保が民間企業の義務になることからも、Webアクセシビリティの検証・テストをどのように行うかは、企業にとって避けられない課題です。

一方で、有効なテストをするためにはテストユーザーを集め、操作してもらうなどの手間がかかるのも事実です。アクセシビリティ自体を知らない人も多い中、限られた時間や予算の制約下でアクセシビリティを達成するためにはできる限り効率的な手段の検討が必要です。

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Webアクセシビリティについては専門チームが、豊富な知識と経験を通じて、ガイドラインに準拠するための評価を実施します。また、アクセシビリティテンプレート(VPAT)やアクセシビリティ準拠レポート(AACL)を活用し、お客様がアクセシビリティガイドラインへ準拠するためのトレーニングも提供しています。Webアクセシビリティについて、お困りの際はお気軽にご相談ください。

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