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カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?定義や評価指標、向上のためのステップを解説

カスタマーエクスペリエンス(CX)は、日本語で「顧客体験」を意味します。カスタマーエクスペリエンスを向上させることで、企業は製品・サービスにおける「感情的な価値」を創出します。顧客が製品・サービスに愛着を持ち、長期間利用し続けてくれるためにも、製品やサービスに関わるあらゆる部門・役割のスタッフが取り組む必要があります。本記事では、カスタマーエクスペリエンスの意味や目的、具体的な改善手法や評価指標について解説します。

目次

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは

カスタマーエクスペリエンス(CX)は、顧客が製品・サービスを認知し、購買、利用を止めるまでの一連の体験です。

①カスタマーエクスペリエンスの目的

CX向上は、さまざまな観点から企業にメリットをもたらします。以下では、CX向上の目的を3つ紹介します。

(1)競合他社との差別化

CX向上は、製品・サービスの差別化を実現します。

CX向上の範囲は、製品やサービスそのものの機能や体験だけではなく、顧客とのあらゆる接点に関する改善です。仮に、自社の製品・サービスが、競合他社と同一の機能を提供していても、CXという観点では違いが生まれます。

たとえば、顧客が製品・サービスを使い込むための企業からの親切丁寧なサポートや、利用者向けのコミュニティ運営などがあるかどうかで、顧客の製品・サービス活用までのスピードは異なります。顧客からすれば、当然、より手厚いサポートを受けられる製品やサービスの方が好ましいでしょう。

このようなCXへの取り組みが差別化につながるのです。

(2)リピーターの増加・ファン化

CX向上の取り組みでは、顧客から得られたフィードバックやレビューを元に改善を繰り返します。

そのため、顧客は製品やサービスの消費者であるだけでなく、その価値を一緒に高める共創者とも考えられます。顧客を巻き込んでCX向上を目指すことで、継続的な利用だけでなく、ロイヤリティ向上やファン化が見込めるのです。

たとえば、検索エンジンのGoogleでは検索結果画面に「フィードバック」という項目があります。これは検索結果についてユーザーからの意見を吸い上げ、その結果を検索品質に反映するための取り組みです。Googleにとって、検索結果へのユーザー評価が、彼らの事業における重要な要素であることはいうまでもありません。

(3)ブランディング

CXは、製品・サービスのブランディングにおいても重要な役割を果たします。

ユーザーからのフィードバックを通じて改善を行い、CXが向上することで、ユーザーの「感情的な価値」が向上します。顧客の感情や思考にも配慮した体験を設計することで、顧客の頭の中に「○○な製品・サービス」といった具体的なブランドイメージを醸成できるのです。

ポジティブなブランドイメージが与えられれば、

  • 「(価格は他社と比べて高いかもしれないが、)同じ〇〇シリーズだから、親切丁寧なカスタマーサポートが期待されるだろう」
  • 「(本当はデモ環境でじっくり確かめたいが、すぐに導入を決定しなければならないシチュエーションにおいて)同じ〇〇シリーズだから、使い勝手は当然優れているだろう」

と、クロスセルに繋がる、といった可能性が一例として考えられます。

②ユーザーエクスペリエンス(UX)との違い

UXとCXの明確な定義訳は難しいのが現状です。ユーザーエクスペリエンス(UX)は、製品・サービスを実際に利用して得られる体験のことです。

UXの取り組みとして、たとえば、ECサイトであれば、商品の購入取り消しをしたいユーザーに対して、購入取り消しの導線をサイト内で見つけやすい位置に設置することなどが挙げられます。画面遷移やボタンの配置、フォームの入力項目など、ECサイトそのものの使いやすさがUXの焦点です。

一方、CXでは製品・サービスの利用開始前後の体験も対象です。

たとえば、商品の配送において、商品発送時に宅配業者の荷物番号をメールで通知し、メール内から宅配業者の日時変更ができるようにしておくのも、CX向上の取り組みの一環です。さらには、遷移先の日時変更画面に荷物番号を自動連係する形でURLを記載すれば、ユーザーは荷物番号の入力の必要がなく、非常に顧客目線といえます。商品到着後に不具合がないかのアフターフォローを電話で行ったり、キャンセル期限までにメール通知を送るなどの取り組みも同様に、CX向上の取り組みと考えられます。

③カスタマーサクセス(CS)との違い

カスタマーサクセス(CS)は、製品・サービスの利用を通じて、顧客が満足感のある体験を得るために行われるサポートの総称です。

近年のビジネスモデルは、従来の買い切り型から、継続利用を前提とした月額定額制に軸足が移りつつあります。特に、BtoB向けのSaaSでは、製品の設定や使い方が分からないと、顧客が製品・サービスを使いこなせないまま時間が経ち早期解約につながります。そのため、企業は、能動的に顧客へのサポートを行い、顧客が製品を満足に使い続けられる状態を目指すのです。

CSは、顧客とのコミュニケーションをいつから行うかという点で、CXと対象範囲が異なります。

CSでは、製品・サービスの利用開始以降に主眼が置かれており、CXは、その認知から利用まで一連の顧客体験が対象です。一方で、利用開始以降の顧客満足度の最大化という点においてCSは、CX改善の取り組みの一環ともいえます。

カスタマーエクスペリエンスの指標

CX向上の取り組みでは、顧客満足度を客観的に計測するためにさまざまな指標が用いられます。以下では、4つの代表的な指標を紹介します。

①ネットプロモータースコア (NPS)

ネットプロモータースコア(NPS)は、顧客の製品に対するロイヤリティ(愛着)を客観的に計測する指標です。

計算にあたっては、顧客に「この製品を家族や知人にどの程度勧めたいか?」という質問を行い、0から10の11段階で回答を求めます。11段階のスコアは9〜10を「推奨者」、7〜8を「中立者」、0〜6を「批判者」に分類します。推奨者の割合と批判者の割合の差がNPSです。質問内容が商品の推奨度合いを意味するため、NPSとCXには相関が見られます。

②顧客満足度スコア (CSAT)

顧客満足度スコア(CSAT)はその名の通り、顧客の製品に対する満足度を計測する指標です。

一般的に5段階評価で顧客に満足度アンケートを行い、全回答数に対して「満足」(5段階評価で4または5)と回答した割合を計算します。顧客の主観的な感情を表すため「感情的スコア」とも呼ばれます。回答結果が、調査方法や調査対象の影響を受けやすいため、競合製品との単純比較には用いることができない場合もある点に注意が必要です。

③顧客生涯価値(LTV)

顧客生涯価値は、英語でLTV(Life Time Value)と定義されます。一人(または一社)の顧客が特定の製品を使い始めてから、利用を止めるまでにどれだけの利益をもたらすか算出する指標です。

LTVを算出することで、顧客一人当たりの獲得や維持にかけられるコストの算出が容易になります。LTVの計算方法は複数があるため、自社の製品に合わせた計算式の検討が必要です。

最もシンプルな計算式は「LTV = 顧客の平均購入単価 ×粗利率 ×平均購入頻度 × 平均継続期間」です。

④解約率(Churn Rate)

解約率(チャーンレート)は、月額制の製品・サービスにおいて、顧客が解約する割合を示した指標で、一般的には月単位で○%と示すことが多いです。

継続利用が前提の月額制モデルにおいて、解約率を低く抑えることは、収益の安定化につながります。また、解約率の高さは、製品やサービスに対する満足度の低さとも捉えられます。既存顧客の継続利用を推進する上で、解約率の計測と解約理由の把握は大事なポイントです。

カスタマーエクスペリエンス向上のステップ

CX向上は継続的に行うべき取り組みです。以下では、CXを向上させる具体的なステップやツールを、PDCAサイクルに沿って紹介します。

①戦略策定(Plan)

CX向上のための戦略策定は、ペルソナ設定とカスタマージャーニーの作成を通じて行われます。

(1)ペルソナの設計

ペルソナは、製品・サービスを利用する典型的な顧客像です。

たとえば、ファッションECサイトのペルソナは、「20代前半女性で情報収集におけるSNSの利用率が高い人」のように定義します。

なお、CX向上にフォーカスを当てた場合のペルソナ設計では、ロイヤルカスタマーの要素もポイントです。ロイヤルカスタマーとは、購入額が多く、製品への愛着が高い顧客です。NPSやLTVが高い顧客群は、ロイヤルカスタマーといえます。

ロイヤルカスタマーは、CX向上の取り組みにおいて優先して考慮されるべき顧客であり、同時にロイヤルカスタマーの意見やレビューは、製品の改善や認知拡大に重要な役割を果たします。

(2)カスタマージャーニーの作成

カスタマージャーニーは、顧客が製品・サービスを認知し、購買や利用に至るまでのプロセスです。このプロセスを可視化した図が、カスタマージャーニーマップです。

カスタマージャーニーマップには、顧客の行動だけでなく感情や思考も記載します。CX向上の取り組みにおいては、カスタマージャーニーマップに記載された一連の行動が改善の対象です。

カスタマージャーニーマップを通じて顧客理解を深め、顧客が製品・サービスと関わる一連の流れにおいて、どこにどのような課題があるかを特定し、その改善方針について議論します。

(3)KPIの設定

CX改善の目標は、顧客体験の最適化です。その成果を客観的に計測可能なものとするために、NPS・CSAT・LTV・Churn RateなどをKPIに設定します。

目標数値は、製品・サービスが属する市場の特徴や事業方針に合わせて検討しましょう。設定したKPIは定期的に計測を行い、CX改善の取り組みを実施した前後で数値にどのような変化が起こったのか、誰でも把握可能な状態にしておく必要があります。

②戦略実行(Do)

ペルソナとカスタマージャーニーを通じ定義した顧客課題に対して、どうすれば課題解決できるのか、仮説の立案と検証を行います。

(1)プロダクト設計と実装

「製品やサービスへの機能追加や改善を行うことで顧客課題が解決されるか」の検証を行います。

たとえば、あるECサイトの顧客課題を「再購入時に似たようなアイテムを見つけづらい」と定義したとします。この場合、「サイト上で以前購入したアイテムに関連する商品をレコメンドする機能を開発する」ことが一つの解決手段であると仮説が立てられます。

仮説を立てる際は、仮説の検証方法までワンセットで事前準備することが大切です。リリースされた前後で設定したKPIにどのような変化があったかの分析や、その機能自体に関する顧客からのフィードバックの収集を行います。

(2)プロダクト開発以外の検証方法

機能追加や変更を行うには、一定の時間がかかります。最近は、製品デモを行うためのツールも普及してきています。デモツールでは、ボタンクリックによる画面遷移やアニメーションをツール内で再現し、簡易的に実際のプロダクト上での動きを表現します。デモツールを用いることで、製品やサービスに変更を加えることなく、使い心地に関するユーザビリティテストを実施することも可能です。

このように、CXの検証は多様なアプローチが考えられるため、組織体制やフェーズに合わせて最適な手段を検討しましょう。

③振り返り(Check)

カスタマージャーニーの検証を実行したら、その振り返りを行います。振り返りはKPIの変化だけでなく、さまざまな側面から分析を行い、なぜその結果が得られたのかについて深掘りを行います。

(1)顧客データ分析

Webサービスであれば、アクセス解析ツールの導入やデータベースに保存された購買情報を集計することで、サイト上の顧客行動について詳細な分析を行えます。以下では、顧客データに関する代表的な分析手法を紹介します。

(1−1)セグメント分析

セグメント分析は、性別・年齢・利用デバイス・住所など、顧客を任意の属性(セグメント)に分類し、行動や満足度に違いがないかを分析する手法です。

Webサイトであれば、会員登録時に入力された個人情報や、アクセス解析ツールを用いて得られたデバイス情報等を元に、セグメントを作成します。

CX向上の取り組みでは、ロイヤルカスタマーとなるセグメントの検討・定義を行い、データを絞り込んだうえで、検証の前後で商品購入までにかかった時間やサイト内でのページ遷移の変化を確認することもあります。

(1−2)ファネル分析

ファネルは、顧客が製品・サービスを認知・購入するまでのステップです。

一般的にファネルは、購買などの後工程に進むほど、ユーザー数が減少します。そのため、ファネル分析では各ステップ間でユーザーの離脱率が高い箇所を特定し、そこを中心にCXの課題を深掘りするのです。

(1−3)ヒートマップ分析

ヒートマップは、Webサイトに訪れた顧客の動きを、数値データや色などで視覚化するツールです。

読了率などによって色分けが行われ、ページ内でクリックされた要素やスクロール状況などが、一目で把握できます。最近では静止画だけでなく、利用中の映像を録画して、顧客の操作を追えるようなツールも登場しています。

(2)BIツールを用いた分析

ビジネスインテリジェンス(BI)ツールは、複数のシステムにまたがる、事業上の意思決定で重要となるデータを一箇所に収集し、分析を行えます。

一般的には、製品・サービスのデータベースや顧客管理ツール等からデータを取得・集計し、ダッシュボード上で表示します。顧客データと実売データ、サイトへのアクセス状況などを横断的に集計・分析可能です。

(3)テスターによる定性的なレビュー

開発が完了したプロダクトをリリースする前にテストを行う作業担当者を、テスターと呼びます。テスターによるテスト検証の結果、得られたデータやフィードバックも重要な分析対象です。

テスターは、ペルソナに近い人を見つけることが望まれます。テスターが意図通りにWebサイトや製品・サービスの操作を行ったかどうかや、どのページがテスターにとって使いにくく離脱ポイントなっているか、それらのプロセスを定性的かつ詳細に把握できます。

製品やサービスを作り込む段階において、実際の利用者からのフィードバックは、方針検討やアイデア出しを行うために欠かせません。

④改善(Action)

振り返りを通じて得られた事実や仮説を元に、次に取り組むべき改善施策を検討します。

(1)A/Bテストによる検証

A/Bテストは、顧客毎に表示するページや機能をパターン分けすることで、どちらのパターンがより優れているかを検証する方法です。

専用のツールを利用することで、複数のパターン比較を効率よく実施可能です。改善案を製品全体に反映する前にテストを行うことができ、効率的な改善プロセスが実現します。

(2)カスタマージャーニーの見直し

振り返りから得られた事実に基づき、実現すべきカスタマージャーニーを再設計します。

たとえば、ユーザーが訪問したページ上で商品検索機能を利用することを想定していたのに、そもそも該当の商品検索ページにユーザーが訪問していないケースなどが考えられます。このような場合、商品検索ページへの導線を見直したり、そもそも商品検索機能を使わずに商品にたどり着ける方法などを再検討する必要があります。場合によっては製品やサービスを抜本的に改善しなければならいこともあります。

カスタマージャーニーの再設計を行った後に、課題の優先付けやCX向上に必要な機能やインタラクションを検討し、次の検証プロセスを実行するのです。

カスタマーエクスペリエンス向上につながる施策

以下では、CX向上につながる具体的な施策について紹介します。

①コンテンツのパーソナライズ

MAツールやWeb接客ツールを使うことで、ユーザーに配信するコンテンツをパーソナライズできます。

パーソナライズにより、顧客ニーズに柔軟に対応したOne to Oneマーケティングが実現され、CXの向上が見込めます。パーソナライズに高い効果が見込まれる場合は、ツール導入による施策だけでなく、商品のレコメンド機能の実装など、本格的な開発を含む改善も視野に入れます。

②部門間でのデータ連携

CX向上の取り組みは、特定の部門のみで行うわけではありません。マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、製品・サービスに関わるさまざまな部門が協働してCX向上に取り組みます。

部門横断で顧客データを連携することは、そのチームワークを深める重要な施策です。たとえば、ユーザーの年齢や性別での購買傾向、解約率やキャンセル率、商品購入後の問い合わせ数の推移などは、ユーザ理解を深める重要なデータの一例です。

このような顧客データが部門間で共有されることで、部門に関わらず企業の対応に一貫性が生まれ、結果としてCX向上が見込めるのです。

まとめ

カスタマーエクスペリエンスの向上は、特定の組織内の活動だけでは完結しません。ユーザーを巻き込み、製品・サービス自体のユーザビリティ向上や、部署横断でのユーザー理解や連携が求められます。

また、CX向上の取り組みを行うには、ソフトウェア上に限らず、リアルなユーザーの体験を再現しないと検証を行えないこともあります。ユーザーとの距離が近ければ検証の協力を依頼できるかもしれませんが、必ずしも本音を語ってくれるとは限りませんし、実際のユーザーに本格的な検証を要求するのも現実的ではありません。

Applauseは、世界200以上の国・地域で70万名以上のテスターを抱える、世界最大級のクラウドテストソリューションです。CXテストにも対応しており、顧客視点で製品・サービスに関するさまざまな顧客体験を再現可能です。

CX向上についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。

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