あらゆる場面で有効なユーザーテスト メリットや実施方法、フローを紹介
顧客体験が重要視される現代のビジネスにおいて、実際の顧客の反応を確認するためにユーザーテストを活用する企業が増えています。ユーザーテストはソフトウェアに限らず、サービス、ハードウェア開発などあらゆる場面で有効な手法です。この記事では、ユーザーテストの概要や具体的な実施フロー、実施における課題などについてご紹介します。
ユーザーテストとは?
ユーザーテストとは、Webサイトやシステム、アプリ、製品などを一般の利用者に利用してもらい、評価を受けることで、改善点や製品・サービスの市場へのフィット度合いを分析する手法のことです。
なぜユーザーテストが必要なのか
なぜ一般の利用者に参加してもらってユーザーテストを行うべきなのでしょうか。その理由として、製品・サービスが提供すべき価値の変化が挙げられます。
従来、製品・サービスの提供においては「機能」が重視されてきました。たとえば、白物家電においては新たに機能を追加することでバージョンアップを図るケースも多かったといえます。一方で、高機能・多機能化によりユーザーにとって利便性に欠けたり、求められていない機能が増えてしまったりという状況が生じました。
機能面での価値向上が飽和する中で、製品・サービスに対するニーズは「体験」へと変化しています。このような状況においては、ユーザーに優れた体験を提供することが製品・サービスの成功に直結します。
ユーザーに対してどのような体験を提供するかは机上で検討できますが、実際にそれを利用したユーザーがどのような印象を持ち、どのような感情となるかは実際に利用してもらうまで分かりません。よって、ユーザーテストを実施することで、「当初想定していた顧客体験設計が適切なものであり、提供する製品・サービスが価値のあるものであるか」を判断することが重要となります。
ユーザーテストが有効となる主な場面
ユーザーテストはソフトウェア・ハードウェア問わず様々な場面で実施すべきものといえます。本格的な製品・サービス開発に入る前にプロトタイプでユーザーテストを実施するケースもあれば、既存製品・サービスの改善のために実施するケースも考えられます。
たとえば、新規事業開発においてはいわゆるMVP(Minimum Viable Product:顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)を構築し、顧客に提供して反応を見るケースも一般的です。新規事業への投資という重大な意思決定において、その成否を少しでも高めるために事前の検証を行います。
また、Webサイトにおいてコンバージョン率を高めるために、ユーザーテストを活用することもできます。その他、家電やデバイス、住宅設備など、あらゆる領域においてユーザーテストは有効な手段となります。
ユーザーテストを実施する主なメリット
ユーザーテストを実施するメリットは様々ですが、最も大きなメリットとして、机上では分からない実際の顧客の反応を確認することができる点が挙げられます。これにより、新規開発もしくは改善前に設定した仮説が本当に正しいか、確認することができます。
本格的な製品・サービスの開発や改善にはコストがかかります。事前にユーザーテストを実施することで、製品・サービスの売り上げ不振や、改善効果が得られないことによる無駄な改修コストなど、大きな損失を避けることにつながります。
ユーザーテストの実施フロー
以下では、ユーザーテストの実施フローを紹介します。
仮説の設定
一般的には、商品開発や製品・サービスの改善においてユーザー体験を改善する際には、何らかの仮説をもって取り組みを進めることとなります。
たとえば、「自社のWebサイトにおいてサービス申込時の離脱率が高い」という問題があったとします。検討を進めたところ、これは、「申込時の入力フォームが不親切であり、申込をしようとした方が入力を手間に感じてしまうことが原因である可能性が高い」という結論に至りました。
この仮説はある程度正しいものだと想定しつつも、実際にどのような改善をしたらユーザーが手間を感じず入力を進めてくれるフォームになるかは非常に難しい論点です。場合によっては改善前よりも離脱率がさらに悪化してしまう可能性もある上、そもそもフォーム入力の手間が原因ではなく、フォーム申し込みが完了したと勘違いしてしまう確認画面等、別の根本的な原因が存在する可能性もあります。
よって、この仮説が妥当であるか、また妥当であるのであればどのようにフォームを修正すれば離脱率が改善されるのかを検証する必要があります。改善後のフォームを用意したうえで、入力フォームの改善前後でどのように入力の手間や印象が変化するか、ユーザーテストを実施することで、検証を行います。
テスト実施方法の設計
仮説に基づき、具体的なテスト実施方法を設計します。ここでは、テスターをどのような層とするか、どのようなタスクや操作を行ってもらうか、どの程度の期間をかけて実施するか、テスト結果をどのように集計するかなどを整理します。
上記の例であれば、理想的には自社の製品・サービスのターゲット層を対象にテストを行うべきです。なぜなら、10代のユーザーと60代のユーザーでは、入力フォームへの入力に感じる負担感や、好まれるインターフェースが大きく異なるためです。たとえば、自社の製品・サービスのコアターゲットが30~40代の女性であれば、その層を対象にユーザーテストを実施するべきでしょう。
テストの実施方法としては、テストサイトを構築して被験者の方に複数のフォームを操作してもらい入力負担をアンケートなどで評価する方法等が検討できます。
なお、ユーザーテストの活用方法としては、ユーザー体験の面だけではなく、「機能面のテストにユーザーテストを活用する」というケースもあります。製品・サービスの開発者が行うテストは、どうしてもバイアスが生じやすくなります。開発者は製品の仕様を十分に理解しており、その仕様から大きく外れた操作は行いません。製品・サービスに対する前提知識やバイアスがない一般ユーザーの方が、開発者の想定外の挙動を行う可能性も高く、そこで新たなバグや障害を発見できるケースも多いです。このように製品・サービスの機能面での品質担保のためにユーザーテストを実施するという方法も検討できるでしょう。
テスターの確保
テストを実施する前に、テスターを一定数確保する必要があります。もっとも簡単な方法は、社内の従業員やその関係者などでテストを行う方法です。一方で、この方法は、属性が偏ったり、前提知識を持った社内メンバーによるバイアスがかかったりする可能性もあります。
製品・サービスに対するより客観的な意見を収集するためには、社外の一般ユーザーにテストを行ってもらうことが有効です。既存製品・サービスであれば、テストの目的によっては既存ユーザーにテスターとなってもらうことが望ましいケースも多いです。物理的な製品であれば、モニターを募って一定期間自宅などでサンプルを使ってもらう方法もあります。
テスト実施
テスタ―の確保や日程調整などを実施したうえで、テストを行います。テストの内容によっては、テスト環境を用意する必要もあります。
たとえば、小売店において商品の展示方法を改善するテストを実施する場合は、実店舗もしくは最低でも会議室などに棚と商品を用意しなければなりません。ソフトウェアのユーザーテストを実施する場合であっても、実際にテスターが操作できるアプリとデバイスを用意する必要があります。
結果集計・分析
テスト結果は、ヒアリングやアンケートなどにより収集します。ヒアリングは、内容を深堀して確認することができますが、意見収集に時間がかかる点がデメリットです。一方でアンケートは、画一的に結果を集計できるため、数値的な評価がしやすいという特徴がありますが、詳しい感想などを深堀して確認するのが難しいという面もあります。収集したいテスト結果の内容やスケジュールに応じて、これらをうまく使い分けることがポイントです。
物理的な機器やソフトウェアのテスト結果の収集においては、あらかじめ操作内容や利用方法をトラッキングできるように機器やソフトウェアを設定しておく方法も考えられます。操作にかかった時間や操作手順、利用継続時間など、評価に必要と思われる情報をログとして収集しておきます。さらに発展的な方法として、アイトラッキングシステムを利用して画面操作時にどのように目線が動いているかを把握したり、場内の動きをカメラで撮影したうえで、画像解析をかけてテスターの動きを検知したりといった方法も考えられます。
ユーザー体験だけではなく機能面の評価も行う場合は、バグの検出件数の統計的評価などが含まれるレポートも作成します。この場合、一般的なユーザーではなくテストに関する専門知識を備えたメンバーによるテスト結果の集計作業が必要でしょう。
収集した情報は、仮説に基づき分析を行います。結果として仮説が正しかった場合はそのまま取り組みを進め、仮説の見直しが必要であれば仮説を再確認することとなります。事前にKPIとして目標値を設定しておくことで、テスト結果の評価も実施しやすくなるでしょう。
ユーザーテストを実施する上での課題
様々な効果を得ることができるユーザーテストですが、実施においては課題もあります。
テスターの確保が難しい
もっとも大きな課題は、テスターの確保が難しいという点です。特に、客観的な評価を実施したい場合には社内関係者以外のテスターを確保しなければなりませんが、テストの対象としたい属性のテスターを一定数確保するのは簡単ではありません。
既存製品・サービスの顧客に対して検証を行う場合はまだしも、それ以外のケースにおいてはテスター集めに苦労するケースは多いといえるでしょう。
実施にあたって専門的な知見が必要となる
ユーザーテストの設計や実施、結果分析には専門的な知見が必要となります。特にこれまでユーザーテストを実施した経験が少ない企業においては、テストシナリオやテストケースの作成は難しいケースもあります。
ユーザーテストを実施するためには一定の期間・コストがかかるため、失敗しないためにもテストの経験が豊富な企業に相談することも検討すべきでしょう。
テスト設計や準備に時間がかかる
テスト実施方法の設計やテスターの確保、テストの実施、分析といった一連のフローを実施するためにはそれなりの時間が必要です。市場環境が目まぐるしく変化する現代において、製品やサービスのリリース前に費やすことができる時間は限られます。結果として十分にテストができず、検証が不完全のまま本番開発に進んでしまうケースもあります。
グローバルのユーザーによる第三者検証サービス「Applause」とは?
このような課題を踏まえると、ユーザーテストを実施する際には社外の知見やリソースを有効活用することも検討するべきです。当社では、ユーザーテストにおけるこれらの課題を解決できるクラウドテストソリューション「Applause」を提供しています。
Applauseは世界200以上の国・地域で100万名以上のテスターを抱える、世界最大級のサービスです。テストケースに合わせて対象としたい属性を持った被験者をアサイン可能であり、豊富な実績から、専門的な知見に基づきテスト計画から実施、分析結果の報告までサポートします。
まず初めに1~2か月という期間で短期パイロットを実施することもできますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
まとめ
この記事では、ユーザーテストの概要や実施フロー、よくある課題についてご紹介しました。顧客体験が重要視されている現代のビジネスにおいて、実際のユーザーに近い立場の方に参加してもらうユーザーテストは非常に有効な手法です。これまで社内のみで製品・サービスの評価を行っていたという企業の方も、ユーザーテストによる提供価値の向上について検討してみてはいかがでしょうか。