カスタマージャーニーとは?作成方法や作るうえでの注意点をわかりやすく紹介
カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを認知し購入、利用するまでの一連のプロセスを「旅」に例えた概念です。それらを可視化したものを、カスタマージャーニーマップと呼びます。カスタマージャーニーマップを作成することで、より顧客理解が深まります。本記事では、カスタマージャーニーマップの作成手順や注意点について解説します。
カスタマージャーニーとは
まず、カスタマージャーニーの概要と目的を紹介します。
①カスタマージャーニーの概要
カスタマージャーニーは、顧客が商品・サービスの購入をするまでの一連のプロセスです。顧客の行動・思考・感情を整理、分析することで、顧客ニーズの把握、商品・サービスの開発に活用します。
②カスタマージャーニーマップ作成の目的
カスタマージャーニーを可視化した図を、カスタマージャーニーマップと呼びます。
カスタマージャーニーマップ作成にあたっては、ペルソナを定義します。ペルソナは商品やサービスを利用する典型的な顧客像で、ファッションサイトであれば「20代前半の女性で情報収集にはスマホをよく使う」といったものが一例です。
ペルソナのカスタマージャーニーマップを可視化することで、企業が解決すべき顧客課題が明らかになり、商品・サービスが提供するべき価値、あるいは訴求すべきメッセージなどが整理されるのです。
カスタマージャーニーマップには、
- 顧客理解
- 顧客課題の洗い出し
- 課題解決の優先度の決定
という3つの目的があります。
(1)顧客を深く理解する
カスタマージャーニーマップを作成する上で大事なポイントの一つは、顧客理解を深めることです。顧客のことを十分に理解しないまま進めた商品・サービス開発は、的外れな活動になりかねません。
カスタマージャーニーマップを作成するプロセスでは、「顧客がいつどこでどんな行動を取り、どんな気持ちを抱くのか、その際に感じる不満や課題は何か」を丁寧に洗い出します。
そのためには、実際の顧客へのインタビューやアンケートの実施は必須です。この一連のプロセスを経ることで顧客への解像度が高まり、商品・サービスの開発方針や、プロモーション施策をはじめとしたマーケティング戦略の方針を決められるのです。
(2)顧客行動の仮説や課題の洗い出し
カスタマージャーニーマップがあることで、「顧客がいつどこでどんな課題を感じているのか」という見当をつけやすくなります。
たとえば、ウェブサイトへの訪問→商品検索→購入検討→購入という4つのプロセスを考えます。このプロセスにおいて、購入検討に進んでいるユーザーが少ない場合、商品検索のプロセスの課題が考えられます。その上で、検索するキーワードが思い浮かばない、絞り込みで利用できる検索軸が少ない、など、課題を深掘りします。
(3)商品・サービス開発やマーケティング活動の優先度の決定
カスタマージャーニーが可視化されることで、顧客が感じている課題が関係者内で共有され、課題解決のための具体的な議論が活性化します。
課題の洗い出しの項目で例示した商品検索であれば、検索結果の表示や絞り込み条件の追加などの改善案が考えられます。
出てきた改善案について、開発に必要な期間や(カスタマージャーニーの)改善の度合いを検討し、どれを優先して実施するのかを関係者内で協議するのです。
カスタマージャーニーマップの作り方
以下では、カスタマージャーニーマップの基本的な作成方法について、4つのステップで紹介します。
①ペルソナの設定
カスタマージャーニーマップは、対象とするペルソナによって、行動や心情が大きく変わります。
たとえば、年齢やITリテラシーが違えば、商品やサービスを知るきっかけも異なるでしょう。具体的には、TVなどのマスメディアが多いか、それともSNSか、などです。
ペルソナを作成する際には、年齢・性別・職業・趣味・利用デバイス等、具体的な人物像を作ります。
②行動の洗い出し
次のステップは、ペルソナが「商品やサービスといつどこで接点を持ち、どんな行動をとるのか」の洗い出しです。
ペルソナの行動は、商品・サービスによっても変わります。消費者向けの商品やサービスであれば、TVで認知してネットで比較検討するといった行動が考えられますし、BtoB(企業間取引)の商品・サービスであれば、展示会を通じた認知も想定されます。ペルソナの行動の定義には決まったルールはありません。たとえば、申し込む前に、無料会員登録をしてもらう場合は、それも踏まえて行動に落とし込みます。
③感情・思考の洗い出し
一連の行動が定義できたら、その際に顧客がどんな感情・思考をするのか考えます。
たとえば、Webサイト内のフォームへの入力項目が多いと、顧客は入力を面倒に感じるかもしれません。また、商品やサービスの金額がそれなりに高いと感じる場合、購入前に金額の明細を確認したいと思う可能性もあります。
このように、感情のプラス・マイナスや思考の具体的な内容を書き出し、顧客理解を深めていきます。
④課題の洗い出し
行動・感情・思考を整理できたら、カスタマージャーニーにおける課題や改善点を検討しましょう。
課題が明確になったら、何がボトルネックになっているかなどの深掘りを行い、解決案を検証します。課題の策定から検証までのプロセスを繰り返し行い、商品・サービスがブラッシュアップされるのに合わせて、カスタマージャーニーマップもアップデートしていきます。
カスタマージャーニーマップ作成の注意点
顧客の実態に即した質の高いカスタマージャーニーマップ作成は、容易でありません。場合によっては、企業の理想が強く反映されてしまい、実際の顧客像をきちんと反映できていない可能性もあります。以下では、カスタマージャーニーマップを作成する上で、見落とされがちな注意点を紹介します。
①事実と仮説を分ける
カスタマージャーニーマップの作成は、ユーザーへのヒアリングや、書籍やネットでの調査を通じて進められます。その際に重要なのは、
- それが仮説なのか
- ヒアリングや調査データ等に基づく事実なのか
を分けることです。
作成を始めて早い段階や商品・サービスをリリースする前などでは、過去の経験や想像から仮説として書き出すことが一般的です。しかし仮説は実態とはそぐなわないこともあります。
カスタマージャーニーマップを作成する際、それが仮説か事実なのか一目でわかるようにしておくと、どちらを優先すべきかなどを判断しやすいです。
②定期的な見直し
一度作成したカスタマージャーニーマップは、顧客へのヒアリングやフィードバックを得る中で、定期的に見直しを行います。また、顧客課題が商品・サービスを通じて解決されたとしても、そこから新たな顧客課題が見つかるケースも多いです。
商品やサービスが長く使われ続ける上でも、カスタマージャーニーマップを定期的に見直し、顧客行動の変化を見逃さないようにしましょう。
③実際のユーザーからのレビューをもらう
前述したように、カスタマージャーニーマップは、事実に即して作成しなければなりません。そのため、作成にあたっては、可能な限り、実際の顧客からインタビューやフィードバックを集めるようにしましょう。
また、得られた事実が、
- 一人の顧客にとってのものなのか
- 広く大半の顧客に共通するか
は別の問題です。ヒアリングを実施した顧客が、偶然その仮説に当てはまった可能性は捨てきれません。現実味のあるカスタマージャーニーマップにするためにも、顧客の声はできる限り広く集めることを意識しましょう。
④過剰な作り込み
カスタマージャーニーマップの作り込みは、非常に多くの議論や調査が必要です。
しかし、とくにサービス開始から間もない段階では、適切な検証を行う環境がないことも考えられます。検証は大事ですが、あまりに手間をかけすぎて商品やサービスのリリースが遅れるようになっては、本末転倒です。
また、カスタマージャーニーマップは短期間で完成させるものではなく、商品やサービスの運営に合わせてブラッシュアップし続けるものです。カスタマージャーニーマップの作成が目的とならないように、商品・サービスの規模やフェーズに合わせて適切な工数をかけるようにしましょう。
カスタマージャーニーとタッチポイント
カスタマージャーニーは、商品・サービスと顧客の接点を軸に作られます。この接点は、専門用語でタッチポイントと定義されます。
①タッチポイントとは
タッチポイントは、企業やブランドが顧客になんらかの影響を及ぼす、あらゆる情報接点です。
パンフレットや店舗での接客といったオフラインのタッチポイントと、ネットの記事やSNSといったオンラインのタッチポイントに大別されます。
カスタマージャーニーでは、顧客行動を洗い出した上で、その中でどの行動をタッチポイントとするかを企業が選択します。企業はタッチポイントを通じて顧客に商品・サービスの認知や提供を行うため、タッチポイントは、最適な顧客体験を設計する重要な要素です。
②チャネルとの違い
チャネルは、タッチポイントと頻繁に混同されます。チャネルとタッチポイントは、どちらも顧客接点を意味します。
その違いは、チャネルが手段、タッチポイントは顧客が商品やサービスに接する具体的な場所です。たとえば、顧客が商品やサービスを認知するチャネルは、SNSや検索エンジンです。この場合、タッチポイントは、企業の公式SNSや商品のWebサイトになります。
③カスタマーサクセスにおけるタッチポイント
タッチポイントはマーケティング分野の用語ですが、顧客ニーズやビジネスモデルの変化に伴い、カスタマーサクセス活動でも重要なコンセプトになりつつあります。
カスタマーサクセスとは、商品やサービスの提供を通じて、顧客の成功体験につなげるという考え方で、主にBtoB(企業間取引)で使われる言葉です。電話やチャットでのサポート、顧客向けのFAQマニュアルの提供など、カスタマーサクセスの顧客接点はさまざまです。タッチポイントはLTVを元に分類されることが一般的です。
以下では、カスタマーサクセスにおける3つのタッチポイントの概念について紹介します。
(1)ハイタッチ
ハイタッチは、顧客との1対1でのコミュニケーションを前提にした、カスタマーサクセスのタッチポイントで最も手厚いフォローが行われます。
個別の説明だけでなく、顧客ニーズに合わせた商品カスタマイズや導入サポートもハイタッチの事例です。属人性が高く、担当者に深い顧客理解が求められます。
(2)ロータッチ
ロータッチは、1対多でのコミュニケーションを前提にした集団的なアプローチのコミュニケーションです。
コールセンターによるサポートやワークショップの開催が代表的な手段です。ハイタッチに比べてコミュニケーションは広く浅くなりますが、人的リソースを抑えたカスタマーサクセス活動が実現します。
(3)テックタッチ
テックタッチは人を介さず、デジタルツールでコミュニケーションを完結させるアプローチです。
自動メール返信やチャットボットの活用、録画済みのオンライン動画での商品説明など、コミュニケーションを自動化することで、多数の顧客への効率的なアプローチが実現します。効果的なテックタッチを行うためには、顧客が商品やサービスの使い方を自力で理解し、体験したいと思えるような、画面設計やシステム設計が重要です。
まとめ
カスタマージャーニーは、顧客理解を深め、商品・サービスの満足度を高める重要な概念です。
関係者内での議論や、実際のユーザーへのインタビュー・テスト・フィードバックを通じて、ブラッシュアップをかけていきます。このプロセスは数回実施して終わるものではなく、継続的に繰り返されます。そのプロセスには、継続的にインタビューやテストに協力してくれる存在が欠かせません。
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